未来からの来訪者


プロローグ「始まりはボソンジャンプから」


火星遺跡付近
「北辰!ここで決着をつけるぞ。」
ブラックサレナ(以降サレナ)がこぶしを握り
「遅かりし復讐人よ、我に勝つ気か。おもしろい。受けて立とう。」
夜天光二式(以降二式)が錫杖をかまえる。
二機はしばらくまったく動かなかった。しかし、しばらくして二機は同時に駆け出した。サレナがこぶしを振り上げ、二式のコックピットを打ち貫こうとするが、二式は錫杖を使いそのこぶしを払い、逆にサレナのコックピットめがけて錫杖を突き出した。しかし、サレナは、それを右肩で受け止め、またこぶしを振り上げる。だが、二式もそれに反応し、すぐに距離を開けた。
「これで終わりにしてやる。」
サレナが半身にかまえた。
「抜き打ちか、おもしろい。受けて立とう。」
二式も半身にかまえる。
「「いざ尋常に―――勝負!!」」
一瞬の時、今度は二式が先に仕掛けてゆく。こぶしをサレナのコックピットにつきたてようとする。サレナはそれを避け右肩にこぶしを打ち付ける。それが当たり夜天光がよろける。サレナが追撃にコックピットを狙う。二式もカウンターとばかりにコックピットにこぶしを打ち付ける。そして、しばしの沈黙。先に崩れたのは二式の方だった。
「ぐふ!見事だ......テンカワアキト。我はそなたみたいなやつと一緒に戦いたかった。」
北辰がそう言った瞬間、
ビー!ビー!ビー!
サレナのほうから警告音がながれた。
「セカンド、何が起こった。」
セカンドとは、サレナについているサポートAIである。
「今の攻撃でジャンプフィールド発生装置が暴走をはじめました。」
どこか女性的な声でセカンドが報告する。
「なんだと!くそ」
「ジャンプ先不明。コントロール不能、ランダムジャンプの恐れがあります。至急脱出をしてください。」
「なに!くそっ!」
「5・4・3・2・1・0....ジャンプ開始します」
この瞬間にサレナと二式の2機とアキトと北辰はこの世界から姿を消した……
「くっ!ここはいったいどこなんだ。俺は確か遺跡の近くで北辰と...サレナの中ではないのか...」
「目が覚めたかい。テンカワ アキト君」
「だれだ!」
そこには1人の女性がいた。髪はロングで銀色、瞳は薄い緑色。そして、ほぼ理想的なスタイルの女性だ。
「私かい。私に名はないが織(おり)とでも呼んでくれ。私は君たちが言うところのボソンジャンプの演算ユニットの人格AIなんだ。」
その言葉を聞いたときアキトからすさまじいまでの殺気が放たれた。
「きさまの、きさまのせいでどれだけに人が犠牲になったと思っている。俺は五感を失った、ユリカだっておまえの人柱にされた。返せ!俺やユリカに人生や夢を返せ!」
「それについてはすまないとしか言いようがない。だが、彼女が入ってきたからこそ私が眠らざるを得なくなったのだ。私は起きていたなら彼女は廃人になっていたのでな。」
「そうだったのか。すまなかった。」
「いや、気にしなくていい。ときに、テンカワ アキト、君はやり直せるとしたらやり直したいかい。」
織がそう言うと
「なに!やり直せるのか!」
「どうなんだい。」
「やり直せるならやり直したい。」
「そうか...だが、その前に合ってもらい人物がいる。」
「誰だ...はっ!まさか!」
「そう...そのまさかだよ。」
「久しいなテンカワアキト。」
その人物...北辰が出てきたら、アキトの体から信じられないくらいの殺気が放たれた。
「北辰、貴様生きていたのか。なら今ここで殺してやる。」
アキトがそう言ったときに織が口をはさんできた。
「まあ待て。アキトこの男はある意味君と同じなんだよ。」
「なんだと」
「とりあえずこの男の記憶をみてもらう。」
「なんだと」
「そうすれば私の言った意味がわかる。」
「何だと、くっ!ぐああ。」
その瞬間、アキトの頭の中に北辰に関する様々な記憶が入り込んできた。木星のとある町で小さな剣術道場を開いて子供たちに剣術を教えている北辰。小さな家で北辰と北辰の妻らしき人と北辰の子供らしき女の子が笑い合いながら食事をしているところやその町を出て、ほかのまちに移り住むことになったこと。その町にいくシャトルが落とされたこと。草壁に捕まえられ、山崎に実験され五感を失い六人衆に五感をサポートしてもらっていたこと。草壁に家族を人質にとられ、人を殺めなくてはならなかった時。人を殺めるたびに壊れてゆく北辰の心。この後はアキトが知っているものとほぼ同じだった。ちがうのは北辰は草壁を憎んでいる事だった。北辰の家族はアキト達A級ジャンパーを誘拐して来たときにはもう殺されていたのだった。北辰がそのことを知ったのはアキトとの最終決戦の前の時だった。
その記憶を見終わったアキトは我知らず涙し、思った。「俺はこんな体になってまだ3年程だ。しかし、北辰は、それよりずっと長い間五感がなく、ずっと殺しをやっていたのか...」
そして北辰は唐突に、アキトに向かって言った。
「テンカワアキトよ、我が憎いなら殺してくれ。」
そういった北辰の顔はあの暗殺者の顔ではなく、どこか疲れ果てた年相応な顔になっていた。
「この記憶をみて殺せるわけないだろう。」
アキトは微笑みながらいった。
「な!ならば我を許すと言うのか。おぬしやほかの火星の者たちをさらい人生を狂わせ、殺したこの我を。」
「お前はそのことを後悔して悲しんでいる。そのことだけで十分だ。」
「......感謝の極み」
そして織が話しかけてきた。
「さて、話は済んだかい。」
「ああ、もう済んだ。」
「では、君には聞いたけど、そっちの人にも聞かせてもらうよ。もしやり直せるとしたらやり直したいかい。」
織は北辰に向かって聞いた
「我はあんなことを認めたくない。やり直せるならやり直したい。」
北辰ははっきりと言った。
「なるほど。ならやり直してみるかい?」
織が事も無げに言った。
「なに!やり直せるのか。」
アキトは驚きながら聞いた。
すると織は
「私を誰だと思っている。仮にも演算ユニットだぞ。できないわけないだろう。」
織は少しだけ胸を誇らしげにそらして言う
「ならばやってくれ。」
「我からも頼む。」
アキトと北辰が頼むが、しかし織は
「まあ、待て2人とも。その五感も機体もない状態でいくのか?」
「「!!」」
アキトと北辰が同時に驚き、アキトが
「サレナはここにきてなかったのか?」
アキトが問うたが、織は
「来ていたが、着地の瞬間のGに耐え切れなかったんだろう。少ししてから大破したぞ。ついでに紅い機体もつぶれていた。」
アキトと北辰はうなだれていた。しかし織が
「だから君たちに行ってもらうにあたって4つのプレゼントを渡そうと思う。」
すると、アキトが訝しげに
「プレゼントだと?」
「そうだまず1つめは、これだ。」
そういった織の手のひらから2つの球体が生まれだし、アキトと北辰の体の中にはいっていった。
「なんだこれは」
アキトが尋ねると、織は
「いいから。そのバイザーを外してみてくれ。」
「何なんだいったい....って目が見える。なぜだ」
「我も見える。もう見えないと思っていたが...」
「それが1つ目のプレゼント。五感のすべてが治っているよ。そのせいで容姿は多少変わってしまったが。」
「いや、気にしなくてもいい。」
「そうか。ちなみに言っておくと髪は銀色に、眼は蒼色になっている。」
「なるほど。わかった。」
「次はこれとこれだ。」
そう言って織はまた4つの球体を出し2人の体の中に2つずつ入れた。
「2つ目は筋肉の強化。今ならばライオンだって片手で倒せるし、銃弾だって避けられる。」
「次に3つ目はボソンジャンプについての知識や使い方などだ。いまならCCがなくても跳べるぞ。最後はこれ。」
そういった織は大きな球体を2つ作り出し、アキト達の傍に置いた。球体の光が消えるとそこには2機の機動兵器があった。1体は闇より黒く、もう1体は血より紅い。
「最後は君たちが乗る機動兵器だ。そのまま行ってエステに乗ってもらってもいいがそれでは機体の方がもたない。なのでこれをプレゼントさせてもらう。名前などは君たちで決めてくれ。後、それからテンカワアキト、君のほうには君の友達が乗っているよ。」
「......友達だと?」
アキトがそう言ったとき黒いほうの機体から声がした。
「私です。マスター。」
「まさか、セカンドか?」
「そうです。」
すると織が「君を助けたときに助けたんだ。」と言った。
「そうだったのか...感謝する」
「それと北辰のほうの機体にもAIを入れてあるから。そっちのほうにも名前をつけておいてくれ。」
「了」
「では、これから行くのは平行世界であって過去ではないことを理解しておいてくれ」
「どう違うんだ。」
その言葉にアキトが問う。
「君たちの知り合いの性格が微妙に違ったり、歴史にないことが起こったりするってことだ。」
「なるほどわかった。では、やってくれ」
「その前にいつに跳ばそうか?」
「ナデシコ発進の1年前に跳ばしてくれ。」
「わかった。」
「何から何まですまないな。」
「気にしなくてもいい。では健闘を祈る。」
「ああ、ではな。」
「さらば。」
「「ジャンプ。」」
そう言うと2人は虹色につつまれ消えて言った。
「がんばってくれ。これが私にできる唯一の償いだ。」
ここから2人の歴史に対する戦いが始まった。

プロローグ完

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