Darkness Phantom Soul相互記念SS







 真夜中のさざなみ寮。

 時間は時計の短針が2を指すような深夜だったが、この日のさざなみ寮のキッチンには
 
 まだ光が灯っていた。

 そのキッチンでは、一人の女性が熱心に何かを作っていた。

「う〜ん、これで良いのかな?」

 本を見ながら作業をするその女性に

「リスティ?こんな遅くに何やってるんだ?」

 まだ起きていた耕介が声をかけた。

「こ、耕介?い、いや、特に何というわけではなくて……その」

 慌てながらリスティは、今作っていた物を背中へと隠そうとするが

「……あ〜、なるほどね」

 今日という日が如何言う日なのか思い出すと共に、キッチンに広がる甘い匂いで耕介は納得した。

「ベ、別に僕がチ、チョコを作ってもいいだろ」

「別に悪いだなんて言ってないだろう……まぁ、相手は気になるけどね」

「ベ、別に誰って訳じゃなくて、そう一度作ってみたかった「相手は、恭也くんかな?」……うん」

 言い訳を言っている途中に、耕介の鋭い指摘に頬を赤く染め素直に頷くリスティ。

「別に隠す事無いと思うけど、何か手伝おうか?」

「い、いいよ、これは僕だけで作りたいから……」

「そうだな、恭也くんもその方が喜ぶだろうし、明日は仕事が休みだからってあまり遅くなるなよ
 それじゃ、俺はもう寝るからおやすみ」

「おやすみ」

 そして耕介は自分の部屋へと戻っていった。

「……さて、もう一踏ん張りだ」

 耕介が行った事を確認し、リスティは再び作業を開始した。

 この夜のさざなみ寮のキッチンから明りが消えるのは、まだ暫く後になる。

















 Bitter and Sweet
















 

「リスティ〜、そろそろ起きた方が良いんじゃないのか?」

「……今何時?」

 まだ半分ほど寝ているリスティ、だが次の瞬間完全に目覚める事になる。

「もう、昼過ぎだぞ」

「……嘘っ!?」

 ベットから飛び跳ねるように起きたリスティ。

「嘘じゃないって、ほら昨日作ったチョコ渡しに行くんだろう?」

「ああ〜!!シャワー浴びてこないと!!」

 慌しく、着替えを持って部屋を飛び出ていく。

「ボイラー沸かしてあるから、直お湯出るぞ」

 耕介の心遣いに

「Thanks!!」

 礼を言い、風呂場へと勢い良く走っていった。

「やれやれ、だから遅くなるなと言ったのに……」

「けっけっけ、この調子なら丁度いい具合に鉢合わせしそうだな」

 と何時の間にか、耕介の隣へと現れていた真雪は楽しそうな笑顔を浮かべてる。

 それはもう楽しそうな……邪悪な笑みが。

「真雪さん、何時から其処に……」

 気配も無く現れた真雪に戸惑いを隠せない耕介に

「んなこたぁどうでもいい……さて、この後も頼むぞ耕介」

 何事も無かったかのように振舞う真雪……勿論邪悪な笑みを浮かべたまま。

「まぁ、リスティの為にもなるから別にいいですけど……程々にしてあげてくださいね」

「わかってるって、程々に楽しむさ」

 言葉とは裏腹に、最後まで真雪の顔から邪悪な笑みが消えることは無かった……。















 無事シャワーを浴び終わり、準備も完了し

「ああ!?もうこんな時間だ!!それじゃ、行って来ます!!」

 リスティがリビングを飛び出ようとしたその時

 ピンポーン

 インターホンが来客を告げた。

「悪いリスティ出る前に、ちょっと出てくれ!!」

「急いでるのに!!はい!?」

 急いでいるので自ずと口調が強くなるリスティの耳に

『高町ですが、耕介さんお願いできますか?』

 たった今会いに行こうと思っていた人物の声が、インターホンを通して届いた。

「って恭也!?い、今開けるから」

『はい』

 少々パニックに陥りながら、玄関に向かうリスティの脳裏に

「……こんな事考えるのは、真雪しかいない」

 ニヤニヤと笑っている真雪の顔が浮んでくる。

「正解〜、ほれさっさと行かないと愛しの君が待ちわびてるぞ」

「くっ、あとで覚えてなよ」

 脳裏に浮んだ表情と同じに笑う真雪を一睨みした後、リスティは再び玄関へと足を進める。

「Hi恭也」

「こんにちは、リスティさん」

「まぁ、入りなよ、耕介も中だから」

「それでは、お邪魔します」

 恭也をリビングへと連れて行くリスティ。

「やぁ、恭也くん、いらっしゃい」

「お邪魔してます、今日は剣のお相手をして頂けるとの事で」

「ああ、俺も一度恭也くんとは手合わせしてみたかったからね」

 耕介と恭也が話しているのを、少し離れた所から見ているリスティに

「ぼーず〜さっさと渡して来なくていいのか?」

 茶々を入れる真雪。

「う、うるさいな……い、言われなくても渡してくるさ」

「まぁ、お茶でも飲んで一息ついたら始めようか」

「はい」

 耕介が席を立ったのを見計らいリスティは

「恭也……」

 恭也に声をかける。
 
「どうしました、リスティさん?」

「ん、その、なんだ……今日はバレンタインだろ、これ僕から」
 
 後に持っていたラッピングされたチョコを、恭也へと差し出すリスティ。

「ありがとうございます……早速頂いてもかまいませんか?」

「あ、うん、もちろん」

 ラッピングを剥がしチョコを口に入れる恭也と、その様子を真剣な眼差しで見つめるリスティ。

「それでは頂きます……この中に入ってるのはコーヒー豆ですか?」

「うん、恭也は甘いの苦手だって言ってたから
 ビターチョコの中にコーヒー豆を入れて少しほろ苦くしてみたんだけど……」

 心配そうに食べ続ける恭也を見つめ続けるリスティ。

「初めて食べましたけど、美味しいですよとても」

「あ、本当かい?」

 恭也の美味しいの一言に、先ほどまでの心配そうな表情は吹き飛び

 リスティの顔には晴やかな笑顔が灯った。

「ええ、本当に美味しいです」

「そ、そっか、よかった」

 そして恭也が食べ、リスティが幸せそうに眺めるといった光景が暫し続いていき

 チョコがなくなった頃を見計らって 

「さて、そろそろ始めるかい、恭也くん借りても大丈夫かリスティ?」

 耕介がキッチンから姿を現した。

「ベ、別に僕に言う必要は無いだろう」

「そうか、じゃあ外に行こうか」

「わかりました」

 そして二人が外へ行った後

「やるじゃねえかぼーず」

 一部始終所か、すべて覗いていた真雪が登場した。

「ふん、当然だろう、チョコの一つも作れない誰かさんと一緒にしないでくれ」

「嬉しそうに笑っちゃって、あたしに感謝しろよ、お膳立てしてやったんだから」

「別に真雪にしてもらわなくても、何とかなったさ」

「まぁ、そう言う事にしておいてやるよ、今は何言っても聞きそうにないからな」

 暫しお互いに憎まれ口を叩き合い

「さて、僕は恭也と耕介の手合わせでも見てくるかな」

「恭也と耕介じゃなくて恭也をの間違いだろう」

「うるさいな、さっさと仕事に戻れば!?」

「ああ、怖い怖い、言われないでも戻ります〜」

「まったく……まぁ、少しは感謝してあげるよ真雪……Thanks」

 リスティは遠ざかる真雪の背中を見て、心からの感謝の言葉を贈り恭也がいる庭へと歩いていった。

 その表情は、自然と柔らかい笑みが浮かび、暫く消えることは無かった……。








 ほろ苦いチョコと、甘い一時の共演

  Happy Valentine’s Day






 




 あとがき

 どうも阪神です。

 相互記念SSとして書いてみましたが……もうとっくにバレンタインはすぎてるんですよね(汗

 ちょっと、バレンタインねたを書いてみたかったので書いちゃいましたが(汗
 
 それでは、これからもこんな文しか書けない未熟な私ですが、よろしくお願いします〜。
 



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